私は30代後半で、はじめて正社員として働き始めました。
それまで非正規雇用でも大きな不自由は感じていませんでしたが、人生の折り返し地点を目前にして、「この生活、一生続けられるの?」と、漠然と老後の不安が芽生えたのです。
「安定した収入があれば、将来への不安も減るはず」
そう思い、正社員として働く道を選びました。
難なく正社員へと転職できたものの、そこは“老後まで安定して働ける環境”ではなく、俗に言う“ブラック環境”。
・上司のパワハラ
・人間関係のストレス
・人手不足による激務
この三重苦が積み重なり、心が少しずつ削られていったのです。
この記事では、そんなブラック企業での体験談と、
・なぜ、「辞めたくても辞められないのか」
・ブラック企業の「辞めどき」サイン
この2つについて、お話しします。
会社を「辞めたいけど、辞められない」と悩んでいる方にとって、判断のヒントになれば嬉しいです。
はじめに:「辞めたくても辞められない」理由
ブラック企業で「辞めたくても辞められない」状態に陥る大きな原因は、ストレスで心と体が疲れ切ってしまい、正常な判断ができなくなるからです。
そしてそこに、このような心理的要因が加わってきます。
・感覚がマヒする
「どこもこんなものかも」「みんな耐えてるし」と、自分の感覚が狂っていく
・自信をなくす
「自分には他で通用するスキルがない」と思い込み、転職の一歩を踏み出せなくなる
・辞めることに罪悪感を覚える
「自分が辞めたら現場が回らない」「裏切りになる」など、責任感が過剰になる
・洗脳的な空気
「ここでやっていけないなら、どこでも通用しない」という言葉を真に受けてしまう
気力と体力が残っていれば、この状態に疑問を感じて、“辞める”行動をとることができるかもしれません。
だけど、心も体も疲れ切った状態では、たとえ疑問を感じたとしても、“辞める”という選択肢にエネルギーを向けることができなくなってしまうんです。
私自身も、「辞めたい」という気持ちをずっと持っていたのに、それを実行に移すエネルギーが湧かず、心身ともに限界まで働き続けました。
ちなみに、厚生労働省の公式サイトにはこんなページがあります。
▶︎確かめよう労働条件 ブラック企業ってどんな会社なの?
▶︎働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト こころの耳
今思えば、就職先は絵に描いたような「ブラック環境」
正社員経験ゼロで、これといった資格なし。
生粋のフリーターだった私が、30後半で初めての就職面接に挑み、1社目で内定獲得。
「私の人生、運がいい!」
そう浮かれたのも束の間。
私を待っていたのは、過去最悪の労働環境。
パワハラ上司に怯える日々でした。
ブラック案件1:上司のパワハラが常態化
入社初日の朝礼後、 目に飛び込んできたのは、営業部長が部下を恫喝する姿。
あまりにも口汚い言葉に「ここはヤバい会社だ」と直感したものの、
「初日から辞めるというのは社会人としてどうなんだろう?」
という一般的なモラルから、ひとまず様子を見ることに。
しかし、初日の直感は見事に的中。
営業部長は毎日のように怒鳴り声をあげ、自分の都合で雑務を押し付け、結果がどうであろうが部下を罵倒。 誰も止めないし、誰も逆らえない。
私は営業部ではなかったけれど、
・営業部が理不尽に怒鳴られるたびに気が滅入る
・営業部ほどではないけど、理不尽に怒鳴られる
・雑務を回される度、「怒鳴られないように」とビクビクしながら仕事をする
そんな毎日を過ごしていました。
ブラック案件2:人手不足による重労働が当たり前
営業部長の存在が原因で、社内は常に人手不足でした。
定期的に中途採用者が入ってくるものの、辞めるのも早く、いつの間にか「どうせすぐ辞めるから」という理由で社員募集は打ち切りに。
一人当たりの職務負担は大きく、ミスをしても上司のフォローはない。
「個々で責任を取れ」「なんとかしろ」という空気で、改善も対策も望めない。
そしてさらに厄介だったのが、辞めるためには
「営業部長に退職を伝えなければならない」
というルール。
退職原因を作ってる本人に、退職を伝える。
当然ながら、みな退職理由を偽って去っていきました。
ごく稀に、営業部長に抗議をして辞める人もいたけれど、それは上に報告せず握り潰す。
そんな人間が上にいる会社はおかしい。
そう気づいてても、すでに辞めたくても辞められない状態になっていました。
限界を超える寸前で、「正常な判断能力」を取り戻す
自分が心身ともに限界だと気がついたのは、ある朝の通勤中。
電車通勤だった私は、ホームで電車を待ちながら、ふとこう考えました。
「このまま、線路に飛び込めば、理不尽に怒鳴られずに済む。楽になれる。」
そして、その瞬間、ハッと気づいたんです。
「なぜ私は、そんなことを考えているんだろう?」
「そんな覚悟があるなら、会社なんて辞められるはずなのに!」
限界を超える寸前で、ようやく正常な判断力を取り戻し、自分の置かれている状況を冷静に見直すことができました。
このときの自分には、今でも心から感謝しています。
二転三転の末に迎えた「接触禁止令」
そこから私は、2度に渡って退職の意向を営業部長に伝えました。
しかしその度に話はすり替えられ、言いくるめられ、うやむやに。
この頃にはもう、「怒鳴られたら辞めるだけ」と腹を括っており、何かを察したのか営業部長が私に怒鳴ることはありませんでした。
そして訪れたれ3度目の「退職話」。
押し問答は過去最長の3時間に及んだものの、最終的には私の気力が尽き、またしても見送りに。
けれど、異常な長時間離席を「ただ事ではない」と判断した社長が、私と営業部長、それぞれと個別面談することに。
私は部長のパワハラに耐えられないことをありのままに伝え、営業部長がどう話したのかは知りませんが、最終的に「営業部長に私との接触禁止を命ずる」という結論が出て、営業部長と距離を取ることができました。
退職する意思を保留に
接触禁止令が出てしばらく後、営業部長が他の社員と関わる機会も激減しました。
職場環境は、営業部長を除けば、それほど悪くありませんでした。
業務内容は好きで、やりがいもある。
会社から評価され、順調に昇給&昇進もしている。
「ここで辞めたら、もう2度と正社員になれないかもしれない」
そんな考えが心を占める割合が増え始め、「あの人と関わらなくて良いなら、辞める必要はないのかも」と、自分の中で退職は一時保留にしました。
まさかの展開で、明るい未来が開けた?
そんなある日、営業部長が会社を去ることに。
青天の霹靂とはこのこと。
社員一同が心から願った「あいつが会社からいなくなればいいのに!」という夢が叶ったのです!
社内の空気が明らかに軽くなり、気持ちも晴れやかに。
・これからは、何にも怯えず、のびのびと働ける!
・この会社、良くなるかもしれない!
平穏な日が続くと思われたのですが……
「あの人と関わらなくて良いなら…」は、幻想だった
まもなく、私の同期が営業部長の後任として昇格。
これまで散々押さえつけられ、嫌な思いばかりさせられ、苦しめられてきた同士なのに。
「あんな上司は嫌だ」「いなくなればいいのに」と、不満を言い合っていた同士なのに。
役職を手に入れた途端、同期の態度が豹変。
かつての理不尽を、そっくりそのまま後輩たちにぶつけ始めたのです。
もちろん、立場が下となった私も例外ではありません。
今度は「後任営業部長」への不満で社員が一致団結し、悪態をつきまくる日々が始まり、数ヶ月後に
「一度しかない人生、死ぬまで愚痴を言っておわりたくない!」
と、退職することを強く決意したのでした。
「辞めどき」はいつ?「辞めどき」に気づいたら、どうすればいい?
先の項目で、ブラック企業で働き続けることで、正常な判断能力が失われていくことをお伝えしました。
「このままじゃまずい」
「今の状況はおかしいかもしれない」
そう考えることができたら、それは“正常な判断力”が戻ってきた証拠。
そして、「辞めたい」と思えるようになった瞬間こそが、まさに「辞めどき」です。
まずは「辞めどき」だと自覚する
「辞めどき」は、心と体からの「休みたいです」というサイン。
それを受けて、すぐに退職できるならいいけれど、世の中そんな決断力がある人ばかりではありません(そもそも、そんな決断力があれば、もっと早い段階で退職しています)。
退職を決める時は、少なからず
「でも、辞めたあとの生活はどうするの?」
「もう少し頑張ればなんとかなるかも」
という、不安と葛藤を抱くもの。
私自身も、さまざまな気持ちを抱えて、退職に踏み切るまで1年近くかかりました。
だからまずは、先を急がず、「今が辞めどきなんだ」と自覚することから始めてください。
「辞めるタイミング」を見逃さない
「辞めどき」が自覚できたら、「辞める準備」を進めていきましょう。
・仕事を辞めて、どうしたいのか考える
・すぐに再就職するのか、しばらく休むのか考える
・親やパートナーなど、頼れる人に事前に相談し、助けを求めておく
・雇用保険(失業保険)の有無を確認する
・労働基準法やハラスメントで訴える気があるなら、証拠を集める
ブラック企業や、ブラック上司の元で働き続けながら、これらを行うのは、容易ではないかもしれません。
でも、「退職と、その後の生活」について考えれば考えるほど、退職が「夢物語」ではなく「現実事」として強く意識されるようになっていきます。
そうすれば、自然と「辞めるタイミング」がやってくるものです。
それは、もしかしたらいつもと変わらない、ささいな出来事かもしれません。
でもきっと「ここだ」と気づけるはずです。
あとは、そのタイミングを信じて、振り返らず流れに乗るだけです。
自分で判断できない時は、第三者の意見を聞いてみる
自分の感覚だけで決められないときは、客観的な意見に目を向けるのも一つの手段です。
身近に相談できる人がいなければ、専門書やサイトを見るのも有効。
下記の動画は、私が退職に悩んでいた時に観て、後押しとなった動画。
3つともすごくわかりやすく、論理的に「辞めた方がいい」と説明してくれてます。
まとめ:限界を迎える前に、考えてほしいこと
私自身、かつては「辞めたくても辞められない」と思い込み、心も体も壊しながら働いていました。
だからこそ、今、こうして伝えたいです。
手遅れになる前に、退職を考えてみてください。
辛い環境に耐え続けるよりも、新しい世界に出る方が、きっと豊かな人生が待っています。
もし今、「このままじゃ壊れてしまいそう」と感じているなら。
まずはその原因から離れることを選びましょう。
誰に何を言われても、あなたの心と体を守れるのは、あなただけです。
「これはもう限界かも」と感じたなら、それが辞めどきのサイン。
自分を壊してしまう前に、会社から離れる勇気を持ってほしいです。
それは「逃げ」ではなく、自分を守るための「前向きな決断」です。