私は2024年9月に会社を退職し、その後4ヶ月間Webサイト制作の職業訓練校に通っていました。
この記事では、職業訓練校制度の概要を紹介しながら、実際に通って感じたリアルな視点も交えて解説します。
・職業訓練校って聞いたことはあるけど、実際どんなところ?
・お金をかけずにスキルアップできるって本当?
そんな疑問を持っている方に向けて、
・職業訓練制度の仕組み
・メリット&デメリット
・申し込みの流れ
これらをわかりやすくまとめています。
職業訓練を検討している方の、不安や疑問の解消に役立てばうれしいです。
職業訓練校って何?誰が利用できて、どんなことを学べるの?
職業訓練校は、
1.仕事を探している人が
2.仕事に必要な新たなスキルを
3.無料または低コストで習得できる
国が運営する学校です。
Webデザイン、プログラミング、事務、介護、製造業など、さまざまな職種の講座があり、ハローワークから申し込むことができます。
「今までとは違う分野で働きたい」「実務経験がないけど、スキルを身につけて転職したい」といった人にとって、非常に心強い制度です。

職業訓練校とは別に、「教育訓練給付金制度」という制度もあります。
これは対象となる通信講座やスクールに通うことで、受講費用の一部が支給される制度。
この記事では、ハローワークを通じて通学する「職業訓練校」について紹介しています。
▶︎職業訓練校と教育訓練給付金との違いはこちらにまとめています
どんな人が通えるの?
基本的に就職活動中の求職者が対象で、次の2パターンに分かれます。
【公共職業訓練】
雇用保険に加入していた人が対象
【求職者支援訓練】
雇用保険未加入者や失業保険受給終了者が対象
それぞれ、受講条件や申し込み方法に若干の違いがありますが、受講できるカリキュラムや授業内容に大きな差はありません。
公共職業訓練と求職者支援訓練の違い
項目 | 公共職業訓練 | 求職者支援訓練 |
---|---|---|
対象 | 雇用保険受給資格者 | 雇用保険未加入者や受給終了者 |
給付金 | 失業給付金が継続支給 | 職業訓練受講給付金(月10万円+交通費)※要条件 |
申込 | ハローワークを通じて | 同じくハローワークを通じて |
開講校 | 公共・民間の訓練機関 | 主に民間の訓練機関 |
私は雇用保険の受給資格があったので「公共職業訓練」を利用しました。
自分にどちらが当てはまるかよくわからない方は、ハローワークで相談するといいですよ!
どんな講座があるの?
開講されている講座は地域ごとに違いがあり、さまざまです。
・Web・IT系(Webデザイン/プログラミング/動画編集 など)
・事務系(パソコン基礎/簿記/会計ソフト)
・医療・福祉系(介護職員初任者研修/医療事務 など)
・製造・技術系(CAD/電気設備/自動車整備 など)
上記の講座は、ほぼ毎月開講しているので安定して人気があるんだなと感じました。
▶︎ハローワークのサイトで都道府県別の講座開講スケジュールを調べることができます!
ちなみに私の希望したWeb系は、ハローワークの職員さんに伺ったところコロナ後からどんどん需要が高まり、「毎回店員を上回る応募がある」と言ってました。
学びながらお金がもらえる!職業訓練校に通う4つのメリット
職業訓練校を利用する一番の魅力は、「お金をかけずにスキルを学べる」という点です。
仕事探しをしている間って、基本的に収入がないですよね。
だから、お金がかからないのは、とっても魅力的!
さらに、通学期間に給付金や交通費を受け取れるケースもあり、「お給料をもらいながらスキルを学べる」と言っても過言ではないです。
以下は、実際に通ってみて感じた4つのメリット。
1:受講料が無料
職業訓練校では、講座の受講費用は原則無料。
テキスト代と保険料は自費負担となりますが、一般のスクールに通うと、入会金+テキスト代+交通費などで軽く数十万円必要になることを思えば、圧倒的なコスパです。
私の場合、テキスト代が約¥20,000、保険料が約¥4,000でした。
▶︎訓練校に通うのにかかった費用はこちらの記事でまとめています
テキスト代については職業訓練校で調べるとよく出てくるので知ってたけど、保険料の存在は実際通うまで知らなかったです。学校の備品を壊した時や、技術職を学ぶ場合は、実習中の怪我に備えて保険加入する必要がありました。
2:条件を満たせば給付金+交通費が支給される
雇用保険の受給資格がある方は、失業給付金をもらいながら訓練に通うことができます。
雇用保険の資格がない場合でも、一定の条件を満たせば「職業訓練受講給付金(月10万円+交通費)」が支給されるケースがあります。
主な条件としては
・世帯全体の収入や資産が一定額以下であること
・通学に支障のない環境にあること
・ハローワークのキャリア相談などで支給の必要性が認められること
条件に該当するかどうかはWebで調べることができますが、ハローワークで相談する方が確実ですよ。
ちなみに雇用保険受給資格者の場合、失業給付金の給付日数の2/3を終了する以前に職業訓練を開始し、ハローワークからの受講指示を受ければ、訓練校卒業まで給付期間が延長されます!
私自身は、この恩恵を受けられませんでしたが、クラスメイトの中には給付終了前に入校し、受給期間延長となっている人がいてました。
3:失業認定日にハローワークに行かなくていい
通常、失業給付を受けるためには月に1回ハローワークに行って
「求職活動をしているけどまだ仕事が見つかりません」
ということを証明する、「失業認定」の手続きを行う必要があります。
でも訓練期間中は、通学していること自体が求職活動の証明になるため、原則としてハローワークに行く必要がありません。
失業認定を受けるのは実質10分ほどですが、人によってはハローワークまでの交通費や往復時間&待ち時間が何時間もかかる場合があるので、この制度はありがたいですね。
私もハローワークから「認定日に来る必要はないですよ」と説明され、訓練中は一度もハローワークに行きませんでした。ただ、クラスメイトの中には「認定日はちゃんとハローワークに来てね」と言われ、面談を受けていた子もいるので、地域によって違うのかもしれません。
4:就職支援(履歴書・面接対策など)の授業がある
訓練校では、就職支援の授業も行われます。
・採用率を上げるための履歴書
・職歴書の書き方や面接対策
・法的な就業規則
・自分に合う企業の選び方
訓練校の一番の目標は、「就職させること」なので、特定スキルに加えて、こういった基本をおさえた授業があるのです。
でも、これらは受講生には不評みたいです……
私も授業を受けるまでは「Webスキルが学びたいのに就活支援の授業なんて面倒でしかないわ」って思ってたし、それが不評の理由かなと思います。フタを開けてみたら、意外とタメになるなと感じたので全日受講したけれど、休む人はめちゃくちゃ多かったです。
利用前に知っておきたい4つのデメリット
職業訓練校はとてもありがたい制度ですが、実際に通ってみると「思っていたより大変かも…」と感じる点もありました。
ということで、実体験を交えながら、4つのデメリットを紹介します。
1:毎日通学が基本で、時間拘束がある
職業訓練校の多くは、平日の朝から夕方まで、ほぼ毎日授業があります。
会社に通うのとほぼ同じ生活となるので、自由時間はかなり限られます。
私の通っていた学校は平日10時〜16時、50分×6コマ+休憩1時間が基本スケジュールでした。
土日祝が休みで、そのほか月に2〜3回「就職支援日」という休日もしくは午前のみ授業の日があり、この日にハローワークの認定を受けたり、面接に行ってきてね、という感じでした。
2:卒業後3ヶ月以内の就職活動が前提
訓練校は「就職支援」制度なので、入校のマスト条件として「卒業後3ヶ月以内の就職を目標とした就活をすること」が掲げられています。これは、事前面接でも入校説明会でもかなり念押しされます。
給付金目的でとりあえず通うというのは許されないし、仮にそれ目的で入校したとして、その先の数ヶ月を毎日「就職プレッシャー」を受けながら学校に通うのは結構しんどいです。
とはいえ就職しなかったからと言って何かペナルティが発生するわけではありません。
就職活動はマストですが、自分の希望する条件と違う会社に無理に就職する必要はないし、卒業後に起業する方も何割かはいるそうです。なんなら私の担任は、「自分は就職に向いてない」という相談をした生徒に「じゃぁむしろ個人事業主の方があっているかも」と、起業を提案されていました。
私も就職はせず個人事業主になりました。
3:人気の学科は競争率が高い
人気の講座は受講倍率が高く、面接や入校テストで落ちる可能性があります。
また、地域によって開講される授業内容も違うので、住んでる場所で希望するカリキュラムがある学校に通えるとも限りません。
私が学んだWebサイト制作系も人気で年々倍率が上がっているらしく、ハローワークで希望を伝えた時に「Web系はコロナ以降人気高いから、試験で落ちる可能性あるけど大丈夫?」と確認されました。
4:就職が保証されてるわけではない
訓練校でスキルを学んだからと言って、必ず就職ができるわけではありません。
特にWeb業界のような実力重視の分野では、訓練校のカリキュラムだけでは即戦力にはなりにくく、自発的なポートフォリオ制作や就職活動の工夫が必要になります。
私のクラスメイトには、訓練校に通いながら20社以上に履歴書を送り面接を受けていたにも関わらず、卒業まで就職が決まらなかった方がいました。
申し込みから入校までの流れをわかりやすく解説!
職業訓練校はハローワークを通じて申し込みますが、いきなり申し込めるわけではありません。
申し込みまでにはいくつかのステップがあります。
私が実際に申し込んだ流れはこんな感じでした。
1.ハローワークで求職申込手続きをする
2.職員から職業訓練校の説明を受ける
3.ハローワークでキャリアコンサルティングを受ける
4.キャリコンから受講許可をもらい、ハローワークに提出→訓練校に申込
5.訓練校にて入校テスト&面接
6.合格すれば、入校して訓練開始
ハローワークでの相談〜申込み手順
まずは最寄りのハローワークで「求職申し込み(失業の届け出)」を行います。
ハローワークに行って、総合受付で「会社を辞めたので、求職申し込みの手続きをしたい」と言えば、どこに行けばいいのか教えてもらえると思います。
求職申し込み手続きの時に「職業訓練校に通いたいと思ってるんですけど」と言えば、職業訓練校の申し込み窓口に案内され、そこで担当職員から職業訓練校の制度や対象講座について説明を受け、訓練校を受けたい旨を記した書類を作成します。
書類作成後、キャリアコンサルティングの予約をとり、コンサルの方と自分の経歴や、職業訓練校に通う必要性などを話し合い、コンサルから受講許可をもらいます。
その受講許可書をハローワークに提出することで、職業訓練校への申し込み手続きが終了します。
事前に訓練校の開催日程を調べておくと良いかも
講座種類や開講時期は地域によって異なります。
受けたい講座がすぐに始まるとは限らないため、ハローワークで早めにスケジュールを確認することが大切です。
私は在職中の8月半ばにハローワークへ行き、
・9月頭に希望しているWebサイト制作学校の面接があること
・それを逃すと次の希望カリキュラムがある学校開講は年明けになること
この事実を知り、働きながら急いで申し込みまでの流れを済ますことになりました。
なので、訓練校に通うことを考えている方には退職前からハローワークに相談に行くことを強くお勧めします。
卒業後の就職率や進路は?
繰り返しになりますが、職業訓練校は「就職に結びつく支援制度」として設計されていますが、受講すれば必ず希望の職に就けるというわけではありません。
ここでは、私が在籍していた訓練校での就職状況や、卒業後の進路についてお伝えします。
就職率の実態と数字
私の通っていた学校の令和5年度の就職率は80%くらいでした。
卒業生の8割が就職していると考えるとすごくいい数字ですが、全員がWeb業界に就職したわけではありません。また、このうち正社員として転職成功したのは20%くらいです。
私の知る限り、クラスメイトで卒業までに就職を決めて退校したのは二人、卒業時点で最終面接が決まっているのは一人だけでした。
Web業界はすぐに就職できるとは限らない
これは私が学んだWebサイト制作業界の話になりますが、Web制作やIT分野は年齢制限が比較的緩く、人気がある反面、実力主義の色も強く即戦力レベルのスキルやポートフォリオが求められるケースが多いです。
訓練校で学ぶ内容は「基礎」が中心なので、それだけで就職活動を乗り切るのは難しい場合も。
結局、この業界への就職を掴み取るのは、ごく一部の「絶対にこの業界で働く」という意志を持って積極的な就職活動をしている人たちだけだなと感じました。
逆に、その意思が伝われば未経験でも採用されるようです。
Web業界で内定を勝ち取るのに大切なことは「受け身ではなく、なんでも自分で学び行動する自主性を伝えることだ」と、講師に言われました。
学んだスキルは別業界や副業にも活かせる
これも私が学んだWebサイト制作業界での話になりますが、職業訓練校で学んだWeb制作のスキルを活かして、別の業界で働く人も数多くいます。
・Photoshop&Illustratorが使えるようになるので、画像編集や資料作成を武器に事務職に就く
・Webサイトが作れるようになるので、それを武器にWebサイトに疎い会社で広告業務に就く
・副業やフリーランスとしてWebサイト制作の仕事を始める
「自分がこれを学んだから」という主観も入っていますが、特にWebサイト制作のスキルは、どの業界に行っても活かすことができる強みになるんじゃないかな、と感じます。
まとめ:職業訓練校はスキルを学ぶだけじゃない!「自分のこれから」と向き合う場所
職業訓練校は、「スキルを学びながら就職を目指せる」国の支援制度です。
授業料が無料(または格安)で、条件を満たせば給付金も支給されるため、収入がなく経済的な不安を抱える人にとって、とても心強い制度だと感じました。
それに、
・自分は本当にこの業界に行きたいのか?
・本当にやりたい仕事はなんなのか?
・Web業界以外でも、やりたいことは叶えられるんじゃないか?
といった、自分自身の気持ちを見つめ直し、その答えを探す時間にもなりました。
これから職業訓練校に通おうと考えている方は、「職業訓練校は欲しいスキルを身につけるだけでなく、キャリアの方向性を考える時間でもある」ということを覚えていてほしいです。
そして、次へ進むための第一歩を踏み出す、有意義な時間を過ごしてほしいなと思います。